「子どもの本この1年を振り返って 2017年」講演、終わりました……

当日配布れたレジュメとリスト3月12日、13日は公益財団法人図書館振興財団が毎年開催している「子どもの本この1年を振り返って」という会に参加しました。1年間に刊行された子どもの本(赤ちゃん絵本からYAまで)から注目作を、絵本、フィクション、ノンフィクション、ヤングアダルトの分野に分けて、それぞれ選書をしてきた方が紹介します。1日で、新刊の総ざらえができるので、学校図書館や公共図書館関係者、読み聞かせボランティアの方達に重宝されている会です。

今年は、第2部の講演を担当したので、初めて参加しました。今まで「図書館の学校」という冊子で拝読するだけだったで、これだけ密度の濃い内容だとは知りませんでした。日本子どもの本研究会・絵本研究部、児童図書館研究会、科学読み物研究会、全国SLA学校図書館スーパーバイザーの方がそれぞれ1時間、この選書リストを元に、この1年の動向や手に取りたい本についてお話されます。皆、新年度の選書に関わる内容なので、とても熱心に聞いていらっしゃいました。

 

「図書館の学校(図書館振興財団友の会)」の選書会などで「誰に向けた本なのかわからない」「子どもにわかるとは思えない表現の本が増えてきた」「子どもの本の編集についてお話を聞きたい」という声が上がり、知り合いだった私に思うところを自由に話してくださいという依頼があり、今回、講演をすることになった次第。それで「かっこいい本を作るのなんて、簡単だ! 子どもの本を編集するということ」というタイトルで2回、お話ししました。

 

写真は、当日のレジュメと私の編集した本のリストなどです。フリーになって17年。この機会に、事務局の方がまとめてくださいました。もう、いきていない本もありますが、ホームページで少しづつ紹介できればと思っています。

 

最近の絵本やイラストレーション、大型の博物学的な図鑑絵本などの「かっこいい」「デザインの洗練された」本が、どうして、今、たくさんの人に手に取られるのかをdesignとcreateという単語を使って考察し、視覚表現に絡め取られて、思考停止にならないよう、かかれていないものをきちんと見ることが大切ではないかと問題提起しました。本を読むときに、批評的、複眼的視点を持つことの重要性を伝えたかったのです。

 

また子どもに向けた表現で、最近の本で突出していると思った本も紹介しました。

「ここがすき」きたやまようこ こぐま社

「おさるのよる」いとうひろし 講談社

「ながいながい骨の旅」松田素子文 川上和生絵 講談社

「いっしょにおいでよ」ホリー・M・マギー文 パスカル・ルメートル絵 なかがわちひろ訳 廣済堂あかつき 

 

当日、岩瀬成子さんの幼年向きの本について、「主人公は2年生だけれど、この内容の機微がわかるのは、もっと大きな子ではないか」などと紹介されていたので、「子どもがわかる」というのはどういうことなのか。「子どもがわかっていると外から見てわかることができるのか」ということもちょっとお話してみました。

私は、この「子どもにわかる」「わからない」という視点をもっと丁寧に考えないといけないなと常々思っています。岩瀬さんの幼年文学は、「わかる」「わからない」ではなくて、この作品は日本の幼年文学の土壌をどれだけ豊かにしているか、この本に表現されている気持ちを持つ子、そういう気持ちに気づく子がいた時に、たどり着けるものとして、こういう本が出版されていることの大切さをもっと、深く感じて欲しいのです。

また、いとうの「おさる」シリーズでも、簡単に「子どもの哲学」なんて言葉でわかったようなふりをしないで、ここに書かれていることにきちんと向き合ってほしい。これは幼児期に呟かれる、世界への驚きから発せられる子どもの「問い」、例えば「空はどこまでが空なの?」といった類の問いを、物語の中に溶け込ませ、その問いに真摯に向き合うことで紡ぎ出された思考を、子どもの肌感覚で捕まえられる言葉だけで綴ったものだと思います。これも子どもがすぐ「わかる」ものではないかもしれない。けれども、子どもはそれを「感じ」、心の底に沈めることはできるのです。

また、雑学的な科学の本が増えているというお話もあったので、「ながいながい骨の旅」やニコラ・デイビス「ちっちゃな ちっちゃな」や「いろいろ いっぱい」のような、知識を物語の中に溶け込ませた科学絵本と、子どもの受容の仕方が違うこともお話しました。これも、すぐに「わかる」か「わからない」か、という問題につながるものだと思います。

 

最後の方は駆け足になってしまい、今回1時間にしては、内容を詰め込み過ぎてしまったかと反省。でも、子どもたちに本を手渡すお仕事をしている方たちに、目の前の子どもの姿とその子の成長の先の姿、その両方を見定めながら、本を読んだり、選んだりして欲しいと切に思いながら、お話ししました。

普段当たり前に本を読んでいるのだけれど、その「当たり前」を疑い、問い直す契機にしてもらえたら。

 

お話しした骨子は「図書館の学校」2018年春号に掲載される予定です。図書館などで所蔵しているところがあると思うので、気になった方はご覧になってみてください。

 

2日間に渡り、のべ180名の方が参加されたそうです。

お話を聞きに来てくださった方、当日まで細やかにご準備してくださった事務局の方、このような機会をくださった方に御礼申し上げたいと思います。

 

 

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